若者論を研究するブログ

打ち捨てられた知性の墓場

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ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討 5.教育測定とはなにか

前章では,主に国内で実施された学力調査の問題点について説明した。これらの学力調査は,西村らの調査のように調査の設計自体が稚拙なものであったり,刈谷調査のようにその結果の示し方や解釈に問題が見られた。ただし,いずれの学力調査にも共通する,よ…

ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討 4.学力低下は「証明」されたのか

4章では主に国内の学力調査の結果とゆとり言説との関連に焦点を当てる。PISA・TIMSSなどの大規模国際学力調査や学力調査それ自体の理論的詳細は5章で扱う。 4.1 学力低下論の源流1―分数のできない大学生 4.1.1 「びっくりするための」調査 4.1.2 危機感を満…

若者論の構造①―若者論のつくりかた

若者カテゴリーの系図 若者論に取り組むにあたって,最初の障害となるのはその「膨大さ」である。若者論は政治・経済・文化の諸問題から,国家論,社会論,日本人論に至るまで,ありとあらゆる分野で論じられている。しかも,それらの若者論は首尾一貫した体…

ゆとり教育によって格差は拡大したのか【未完】

これまで、このブログでは「ゆとり教育による学力格差の拡大」という仮説に対して、折に触れてその検討を試みてきた。個人的には一区切りがついたのだが、何分各記事に分散しており統一性に欠ける。そこで、稿を改めて各検討の略述をここにまとめることにし…

他人に厳しく自分に甘いお花畑ご都合脳のopnihcさんへ

筆誅です🥺 id:opnihc hajk334.hatenablog.jp

それでゆとり教育ってのはどこのどいつだよ

Wikipedia 今日、何の気なしにWikipediaの「学力低下」の項を眺めていると、とんでもない記述が目に入ってきた(既に修正済み)。 苅谷他が行った学力調査では、89年と01年の同一問題との比較では、小学国語で78.9%→70.9%(-8.0%)、小学算数で80.6%→68.3%…

p値に関するASA声明とその解説

以前書いた「ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討」という私的な論説に、補遺として付けていた「p値に関するASA声明(The ASA’s statement on p-values)」の拙訳と解説です。本文を参照する形で書かれているため、一部要領を得ない記述があ…

江見圭司 『ゆとり教育で不足した学力はどこで補完するのか』

10年くらい前にどこかで話題になっていたような気がするんですが、確かなことは忘れました。ともかく、今回はこの論説を検討していこうと思います。思ったより大部になってしまったので、長すぎる、面倒臭い、という方はせめて「4. 学力の国際比較」だけでも…

【メモ】日本人の幸福度について

年代別だとどうなんですかねえ。 2021/11/30 14:17 確かに、調査対象の年齢が全く分けられてないな。 2021/11/30 14:01 年齢別はたしかに欲しかったりするかも 2021/11/30 13:57 治安の良さは空気みたいなもの。寄与しているか不明。私の観測範囲と偏見では…

【メモ】FROGMAN 秘密結社鷹の爪団 独立愚連広報部 『ゆとり教育』

あらすじ 「亜呆」と大書されている白地のTシャツを着たヤンキー風の男と紫のアイシャドーが目立つガングロ風の女性が会話している。女性が便意を訴えると、どこからともなく「ゆとりもん」が登場し「どこでもトイレ」と言っておまるを取り出す。 ゆとりもん…

don_tacosさんへ

朝日新聞33歳記者が“上層部批判”を遺して自殺した | 週刊文春 電子版 [ゆとり世代クライシス] ご冥福をお祈りしますが、記事だけからいうと正直記者が年齢の割にナイーブ過ぎるように思う。世代の人数が少なく、上下同僚のつながりが少ないことや、コロナ…

家庭的背景による日本の学校格差について

「OECDのPISA調査によれば、日本は家庭的背景による学校間格差が参加60ヵ国の中で最も高い」 PISAから日本の学力格差をみる―家庭的背景・学習方略を中心に― 垂見裕子 准教授 (2012年6月当時) – 早稲田大学 高等研究所 猫も杓子も格差を語る時代でありなが…

すももさんの思い出

すももさんの主張 若者は「いい子」(非行の減少、従順さの増加、公的意識の増加)になっているが、精神的には脆弱(自殺率増加、精神的健康の低下)になっている。 pic.twitter.com/tHpRNwPgAY — すもも (@sumomodane) 2019年7月17日 統計数理研究所の「日…

蘇生薬を考案したと称するカナダの青年、公開実験試みてあえなく死ぬ

何らかのメモ。多分面白い死に方とかそういうのを調べていたんだと思う。 ネコを食べた船乗り2人が腹痛で死亡 1人は錯乱/東京・茅場町 1874.11.26蘇生薬を考案したと称するカナダの青年、公開実験試みてあえなく死ぬ 1879.03.23祈祷に凝る男がコレラ患者…

氷河期世代の人生

社会生活基本調査 学業時間 2006年調査では大学生の1日当たり学業時間増加が30分ほど伸びており、以降も増加傾向である。1996年・2001年時点の大学生と2016年時点の大学生を比較すると、1日あたり学業時間は1時間も差がつくことになる。大学生ほどではないが…

「ながらスマホ」を馬鹿馬鹿しく危険な行為だと認知する人達について

「社会問題」を分析する際、社会学においてはしばしば構築主義と呼ばれる理論的アプローチが採られる。構築主義は社会的事象を言語学的行為と人間の社会的相互作用を通して主観的に創造されるものとして捉え、社会問題は「何らかの想定された状態について苦…

非行少女の強姦経験率について

昭和53年から昭和55年にかけてI女子少年院*1に収容された14歳から20歳の少女200人に対して面接法により強姦経験の有無等を聞いたもの。当該調査の詳細は麦島文夫・坪内順子編『非行少女の心理』(有斐閣新書 1982)に記載されている。 200人のうち約半数とな…

正規分布おじさんについて

7年前の話題だが「学力」の分布が必ずしも得点の分布と一致するとは限らないことを示す良い例なので取り上げる。 恐らくおじさんは次のような勘違いをしていたと思われる。仮に、ある集団の学力(あるテスト項目に対する正答確率)が正規分布しているとき、 …

火事場の野次馬は日本の伝統

古来彼岸ノ火事ヲ見テ笑フ者アルモ泣ク者アルヲ聞カズ 尚甚シキハ火事ヲ見物スル者アリ人ノ家ヲ焼キ財産ヲ失ヒ老若男女狼狽奔走スル其有様ハ實ニ氣ノ毒ナル次第ニシテ人間畢生ノ大災難ト稱ス可キモノナレドモ遠方ヨリ見物スル者ハ毫モ之ヲ心ニ関セザル歟、古…

corydalisさんについて

はてなで15年以上活躍されているcorydalisさんについてのまとめです。本当は時系列順に全て見ていこうと思っていたのですが、量が膨大過ぎたため、テーマごとにいくつか典型的な主張を引用しています。また、いつものようにこの記事を読まれたcorydalisさん…

若者論の危機

若者論の意義 (恐らくは)古代から今日に至るまで、連綿として繰り返されてきた若者論の存在意義とは何か。私は若者論の逆機能とでも言うべき現象がその一つであると思っている。ここでいう逆機能とは、若者論において特定の若者像が強調されるほど、当の若…

ゆとり教育論文1000本ノック

CiNiiで「ゆとり教育」をキーワードとして全文検索し、ヒットした全ての論文に短評を加える*1。ただし、レビューする論文はオープンアクセスのものに限定している。また、ゆとり教育言説においては特に理系の研究者による流言飛語やトンデモな言説が目立つた…

ゆとり教育・ゆとり世代の定義

「ゆとり世代」の第一義的な意味は「ゆとり教育」を受けた世代である。ただし、ゆとり教育という言葉には公式の定義が存在しておらず、教育研究者の間でもその用法は統一されていない。また、殆どの人は複数の学習指導要領の下で学校教育を受けているため、…

ゆとり教育によって格差は拡大したのか―PISA調査からの検討

川口説 事実、2002年に土曜日が休日になったことにより、SESによる中学3年生の学習時間と高校1年生の読解力の格差が拡大したと解釈できる研究結果がある(Kawaguchi 2016)https://a.co/bB6Kc3q 「ゆとり教育による格差拡大」を実証するものとして頻繁に…

ゆとり教育期における俳句指導について

はじめに 学習指導要領 教科書 教員の意識/実態調査 結語 引用・参考文献 四季があるのは日本だけですhttps://togetter.com/li/1083681 どうして「四季は日本にしかない」と思ってる人が多いの?そっちの方が不思議。四季に関することは、日本は四季に敏感で…

麻雀における平均順位・ラス率のシミュレーション

「麻雀における平均順位のぶれ 」は信頼区間を用いて簡便に表すことができますが、より分かりやすく体感できるように簡易的なシミュレータをつくりました。以下のコードをRで実行すれば、任意の着順分布について、ある試合数(tt)における平均順位・ラス率…

ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討 3.補遺 『経験と教育』について

経験主義とは何か デューイがその教育哲学の基礎においているのは,経験主義という名からもわかる通り,「教育というものは子どもの実際の生活経験に基礎づけられたものでなければならない」という信念である。経験主義の理論はこの信念から出発している。し…

ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討 3.「ゆとり的教育観」は実在したのか

3.1 「詰め込み」と「ゆとり」の振り子 3.1.1 戦後のアメリカ式教育―新教育 経験主義について 3.1.2 米国教育使節団報告書 3.1.3 新教育批判 3.1.4 道徳の劣化 3.1.5 1958年改訂 3.1.6 1968年改訂―「詰め込み教育」― 3.1.7 1977 年改訂以降―ゆとり教育― 3.1.…

松岡亮二 『教育格差──階層・地域・学歴』 についての補足

素晴らしい本ですがより良い認識のための補足です。 川口説 事実、2002年に土曜日が休日になったことにより、SESによる中学3年生の学習時間と高校1年生の読解力の格差が拡大したと解釈できる研究結果がある(Kawaguchi 2016)https://a.co/bB6Kc3q 川口が…

恐怖の自殺ゲーム「青い鯨」について

最早誰も覚えていない話題だと思いますが供養のため4年前に書いた記事をこちらに載せておきます。備忘録程度の内容だったので多少筆致が乱れていますがご容赦ください。 何これ怖っ。まあ興味を惹かれるのは分かるけどネットの個人発情報を一から十まで真に…