若者論を研究するブログ

打ち捨てられた知性の墓場

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学校行ってもちゃんと勉強しないとダメよねー、というお話

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で、この研究者たちは、就学年数とかじゃなくて、実際に能力テストをやってそれとの相関を見てみたらどうだろうか、というのをやった。それが以下の図。

正確に言うとこのグラフは相関ではなく偏回帰プロット(added-value plot)です。グラフAは"一人当たり実質GDP成長率(1960-2000)"を従属変数として、"1960年時点の就学年数", "1960年時点の一人当たり実質GDP"の2変数で重回帰分析したときの"1960年の就学年数"の偏回帰プロット、グラフBも従属変数は同様に、テスト得点変数を追加して重回帰分析したときの"テスト得点"の偏回帰プロットです。

正確に説明するとややこしいですがRならavPlotsで簡単にグラフが出力できます(データの出所については後述)。

"Years of schooling 1960" , "GDP per capita 1960"の偏回帰プロット。左の図がグラフAに相当します。

"Test score" , "Years of schooling 1960" , "GDP per capita 1960"の偏回帰プロット。左上の図がグラフBに相当します。

で、そもそも偏回帰プロットとは何ぞやという話ですが、まあ名前の通りです。説明変数x_{i}について、他の説明変数を統制した場合の目的変数yとの関係をプロットしたもので、y軸は目的変数yx_{i}を除く変数で回帰分析したときの残差、x軸は説明変数x_{i}x_{i}を除く変数で回帰分析したときの残差になります。

したがって、グラフBの横軸は実際に記録されたテスト得点ではないわけです。まあ初期GDPと就学年数の影響を除いているわけですから、それを「教育の質」と解釈できないこともないですし、一般向けに分かりやすく「相関」と表現したのかもしれませんが、山形大先生は

(ここでのテストは、数学と科学のテストだそうな。具体的なデータ出所は、この論文著者たちの本に載っている模様で不詳。この論文の分析ベースらしい。はてブid:cider_kondoTNX!!)

cider_kondo id:nankichi<同じメンバーの過去論文でPIAACを使って22カ国分比較したのが見付かったので、それ踏まえた研究っぽいですね。http://ftp.iza.org/dp7850.pdf

と中々に寝ぼけたことを仰っていますからね、良く分かってなかったんじゃないでしょうか。具体的なデータの出所についてはグラフの注釈にも本文中にも"1964-2003に実施された国際学力調査"と書かれているんですがねぇ…まあ大先生ですからたった2ページのペーパーを読む時間すら惜しいのでしょう。ちなみに第1回PIAACが実施されたのは2011年です。

1964年から2003年までと言えばFIMS(First International Mathematics Study ,1964)からPISA2003までだろうなって私はピンと来るんですけど、どうも大先生は国際学力調査について余りお詳しくないようで、まあ大先生ですから(ry ただし、得点の正確な算出方法は不明です。単に標準化しただけ…ではないでしょうが具体的な処理については先生も仰っている通り著者たちの本を参照する必要がありそうです。

最後にSupplementary Materialsに記載されているデータを貼っておきます。テスト得点については抜けているのが台湾、それに韓国・シンガポール・日本が団子状態で続くと、まあ近年の国際学力調査と変わらない結果という感じです。