若者論を研究するブログ

打ち捨てられた知性の墓場

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恐怖の自殺ゲーム「青い鯨」について

最早誰も覚えていない話題だと思いますが供養のため4年前に書いた記事をこちらに載せておきます。備忘録程度の内容だったので多少筆致が乱れていますがご容赦ください。

何これ怖っ。まあ興味を惹かれるのは分かるけどネットの個人発情報を一から十まで真に受けちゃいかんでしょ。ただ元の記事が「SNSに熱中し、自らを誇示したい若者の心理を巧みに利用しているようだ」とかいうゴミカス無能分析をやらかしているのでちょっと物申したくなるのは分かる。こいつらは脳に何か欠陥があるのか?マジでそんなことで死ぬと思ってんのか?まあこのように若者論とも全く無関係という訳ではなく、芸能人の後追い自殺の際にも的外れな若者論が垂れ流されたのは記憶に新しいのではないでしょうか。

ところで、少し考えりゃ分かると思うんだけど、別に「青い鯨」なんて集団は(既に)いないしウェブサイトもないしゲームアプリもない。だから

記事読んだら元々21歳のロシア人が創始、中国にも流入してから17歳の男子高校生がコミュニティの主催者になった、とあるけど登場人物全員若者なんだ……。日本だと子供がこっくりさんをする心理と似ているのかな。面白半分で参加したら場の空気に飲まれて本当に祟りや呪いがあるかもしれないって考えちゃう感覚。参加するメリットないのに参加者が絶えないのは単純にみんな興味本位で始めてるからだと思うし。主催者側も参加者側も目的や理由なんか重要じゃないのかも。

こういうのは杞憂だ。あのさぁ…お前の目の前にある箱は何だ?使い方が分からないのか?2017年にもなってネットに潜む闇の組織を信じるなんてピュアすぎないか?そもそも元は自殺を語るコミュニティで自殺を唆したらマジで死んじゃったぜくらいの話だ。というわけで、元ネタはただの自殺教唆なのでやろうと思えば誰でもできます。で、普通に捕まります。

つーかこんな"おいしい"ネタは絶対無関係の自殺と結びつけられるに決まっているわけで、コワイとかスゴイとかアホみたいに騒いでないで「青い鯨と安易に結びつけるようなセンセーショナルな報道が出たら注意しようね!」ぐらいは言っとけよ。じゃないとマジで自殺ゲームみたいなの流行るぞ学習能力ねーなコイツら。あと言うまでもなく130人はデマな、常識で考えろ。というか10代の若者がホイホイ気軽にアクセスできるはずなのに何で誰も見つけられねーんだよアホか。

こういうのはちょっと面白い都市伝説くらいの扱いでいいんだよ。何を真に受けてるんだ馬鹿が。腹が立つからWikipediaの記事に一々反論してみよう。つーかせめて英語版を丸写ししとけよ。ちゃんと公式に確認された事例はないって書いてんだから。むしろだから丸写しできないのか?

Wikipediaによる説明

まずはゲーム内容について。前提として、「青い鯨」の詳細なゲーム内容を明らかにしている確かな情報源は一つもない。一説によれば、ゲームの一環として「ゲームの証拠を残さない」という指示があるために証拠は残らないらしい()拡散元となった時事通信の記事では「インディアン・エクスプレス」を引用してその手口などを解説しているが、当該記事では冒頭からゲームの実在について確認がとれていない旨が強調されている。以下Wikipediaの記述。

1.ロシアのSNSサイト・VKontakteにて、ゲームマスターとコンタクトを取る

VKontakteにおける該当コミュニティは既に削除されており、類似のコミュニティがロシア以外で確認された事実は無い。また「ゲーム」とはBudeikinくん(前述の自殺教唆事件の犯人)が勝手に言っているだけであり、「ゲームマスター」「主催者」「プレイヤー」のような明確な役割概念は存在しない。

2.ゲームマスターは、「一日中ホラー映画を見る」「朝は4時20分に起きる」「指定された音楽を聴く」などとプレイヤーに要求し、プレイヤーはその命令を次々とこなしていく。

「ゲーム」の詳細な内容を最初に報じたのはNovaya Gazetaだが、これが他の報道機関によっても確認されたという情報は無い。ロシア語は分からないので検証する能力も無い。が、記事自体はNovaya Gazetaの公式サイトに存在する("Группы смерти" )のでロシア語が分かる人は頑張って読んでね。

SnopesやBuzzFeedの記事と併せてGoogle先生がロシア語翻訳を頑張った結果によると、諸々のきっかけはRina Palenkovaという少女が自殺した事件であるらしく、これをきっかけにロシアの自殺コミュニティがにわかに盛り上がりを見せ、Novaya Gazetaの記事が出るにも至ったらしい。いくつかのウェブサイトではPalenkovaが自殺ゲームにおける最初の完遂者という扱いになっている。Novaya Gazetaの記事は、近年の若年自殺者の大半がVKに存在する「死の集団」に属していることが独自調査で分かったという与太話である。

3.やがてゲームマスターはその中で、「腕や脚にクジラの絵[2]をナイフで刻め」「ビルの屋上に昇って写真を撮れ」など、異様な行為をプレイヤーに要求する。プレイヤーは睡眠時間を奪われて判断力が鈍り[2]、更にゲームマスターに自宅の住所といった個人情報を要求され従わないと本人や親を殺すと脅迫され[3]、ゲームマスターに逆らえなくなっていく。

同上。基本的に全てのネタ元はNovaya Gazetaである。

4.更に少女の場合は「太っている」。少年の場合は「負け犬だ」などと自尊心を傷つけられる文言や、「“S”で始まる人生で最高のものは、土曜日(‘Saturday’)、セックス(‘Sex’)、そして自殺(‘Suicide’)だ」、「選ばれし者だけの世界がある」と自殺を仄めかす文言を送られる。

出典はDailyMail。その他一切不明。

5.「プレイから50日目に自殺せよ」と最後の命令をくだされる

何故50日なのか。Novaya Gazetaによれば"50 Days Before my Suicide"なる本からインスピレーションを得たのだろうとのこと。なんやねんそれは。なんか読み飛ばしてるかもしれん。

6.このようなゲームは「死の集団」[4]と呼ばれるグループによって運営されており、「死の集団」は子供たちの習慣や興味、心理学に熟知した人物達とされている[1]。また、「死の集団」の目的はインターネット上の広告収入にもあるといわれている

根拠不明。ゲームを運営している集団なり組織なりは確認されていない。また広告収入云々の出典はLenta.ru("Я, наоборот, всеми силами отговаривал их от самоубийства")だと思われる。wikiの記述だけを読むと金のために若者を自殺させる極悪集団に見えるが、ちょっと頭を使ってみよう。広告収入が目的ならわざわざ自殺までさせる必然性は無いし、死んだ分だけページビューは減る。

いまいち前後関係が分からないが、Lentaの記事によるとF57(VKにおけるオリジナルの自殺コミュニティ)の創設者は若者の生き死などには全く興味はなく単に金銭目的であり、その後コミュニティは削除されたものの管理者であったFilip Lis(=fox=Budeikinくん)が似たようなコミュニティを乱立し暴走していったとのこと(「ゲーム」が開始されたのはこの時?)。ちなみに前述のRina Palenkovaはコミュニティのプロモーションに利用されたようだ。

7.サンクトペテルブルク当局は2016年11月、「死の集団」のリーダーである当時21歳の青年フィリップ・ブデイキン(Philip Budeikin)を逮捕した。ブデイキンは、このゲームのアイデアを5年かけて構想しており[5]、さらに被害者の少年少女達を「生物分解するゴミ」「社会に無価値な人間」と呼び、「選択したのは彼らだ。誰も強制していない」「社会を掃除していただけだ」と、反省の弁を述べることはなかった[4][5]。

そう…

8.ロシアでは本ゲームにて、影響を受けた少年少女が130人以上が自殺を実行し、若年層の自殺率は57%増加したと言われている[6]。
また、「青い鯨」ゲームはロシア以外にも登場し、南米や中国[7]で類似した事件が発生している。

そもそもNovaya Gazetaの記事でも説明されているが、130人というのは2015年11月から2016年4月の間にロシア国内で自殺した子供(定義不明)の総数。そのほとんどが「死の集団」に属していたというのはNovaya Gazetaの妄想。

9.また、「青い鯨」ゲームはロシア以外にも登場し、南米や中国[7]で類似した事件が発生している。

出典元は明らかに無関係の事例。

まとめ

まとめると、「青い鯨」(に関連するとされるコミュニティ)は元々ロシアのインターネットフォーラムにおけるごく小規模なグループであり、一連の「ゲーム」と呼ばれるものはグループの中心人物であったBudeikinが個人的に引き起こした自殺教唆事件である。それを各国のメディアが極めて扇情的な形で報道したため世界中で類似の事例(ただし詳細未確認)が散見されるに至っているが、ゲームを一貫して運営している集団や組織などは確認されておらず、要はお前らが騒ぎまくった結果として嘘がホントになりつつあるというのが実態である。

もう一つ注意喚起しておくと、「青い鯨」は今インドでメチャメチャ流行っているらしい。勿論実態としてそうであるという話ではなく、そうしたデマが流行してるという話である。だから青い鯨にしろmomoにしろ"自殺ゲーム"の話でインドが情報源になってるのは疑ってかかった方が良い。あと中東系も。もともとインドでは若者の自殺が社会問題として語られていたのだが、それもあって青い鯨のデマが爆発的に流行してしまったようだ。以下の記事が分かりやすくまとまっている。

Reckless Journalism Created A Blue Whale Panic When We Should Be Talking About Mental Illness
https://www.buzzfeed.com/praneshprakash/reckless-journalism-created-a-blue-whale-panic-when-we

 

2021/04/13 追記

上述したように、SnopesやBuzzFeedのようなオンラインメディアでは、初期の段階から「青い鯨」の実在性を疑う検証記事が掲載されていた。今しがた確認してみると、BBC2019年に同様の検証記事を出しており*1、その甲斐もあってか現在では青い鯨に纏わるデマは大分収束しているようだ(日本語版Wikipediaの記述は大して変わっていないが…)。この手の分かりやすいデマはその真偽を確認するだけでなく、以て後学の資とすべきと思うのだが、大半の人はデマであることはもちろん話題にしていたことさえ忘れているようなので反省など望むべくもない。

 

 

 

*1:注意喚起の記事は2017年の時点で出している。Blue Whale: Should you be worried about online pressure groups? - BBC News