若者論を研究するブログ

打ち捨てられた知性の墓場

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ゆとり教育・ゆとり世代

石井光太 『ルポ 誰が国語力を殺すのか』におけるゆとり教育に関する記述について

ルポ 誰が国語力を殺すのか (文春e-book)作者:石井 光太文藝春秋Amazon同書では「ゆとりに至る道」「ゆとり教育の裏で何が起きていたのか」「社会が求める要求の肥大化」と三節にわたってゆとり教育が論じられているのですが、例によって例の如しだったので…

ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討 5.教育測定とはなにか・補遺

標準偏差 尺度の変換 項目反応理論 最尤推定 周辺最尤推定 テストの等化 有意性検定 標本平均のバラつき 平均点の差の検定 Linking Error Linking Errorの計算 標準偏差 標準偏差というのは,得点分布の「バラつき」のことである。たとえば100人が受験した平…

maicouさんについて

https://b.hatena.ne.jp/entry/4722239533944168642/comment/maicoub.hatena.ne.jp という大変示唆に富んだブコメだったものでこれをブックマーク(いわゆる二階建て)したわけですよ。で、以下のようなコメントを書いたわけです。 ブコメ① 「ゆとりとは言い…

ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討 5.教育測定とはなにか

前章では,主に国内で実施された学力調査の問題点について説明した。これらの学力調査は,西村らの調査のように調査の設計自体が稚拙なものであったり,刈谷調査のようにその結果の示し方や解釈に問題が見られた。ただし,いずれの学力調査にも共通する,よ…

ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討 4.学力低下は「証明」されたのか

4章では主に国内の学力調査の結果とゆとり言説との関連に焦点を当てる。PISA・TIMSSなどの大規模国際学力調査や学力調査それ自体の理論的詳細は5章で扱う。 4.1 学力低下論の源流1―分数のできない大学生 4.1.1 「びっくりするための」調査 4.1.2 危機感を満…

ゆとり教育によって格差は拡大したのか【未完】

これまで、このブログでは「ゆとり教育による学力格差の拡大」という仮説に対して、折に触れてその検討を試みてきた。個人的には一区切りがついたのだが、何分各記事に分散しており統一性に欠ける。そこで、稿を改めて各検討の略述をここにまとめることにし…

それでゆとり教育ってのはどこのどいつだよ

Wikipedia 今日、何の気なしにWikipediaの「学力低下」の項を眺めていると、とんでもない記述が目に入ってきた(既に修正済み)。 苅谷他が行った学力調査では、89年と01年の同一問題との比較では、小学国語で78.9%→70.9%(-8.0%)、小学算数で80.6%→68.3%…

江見圭司 『ゆとり教育で不足した学力はどこで補完するのか』

10年くらい前にどこかで話題になっていたような気がするんですが、確かなことは忘れました。ともかく、今回はこの論説を検討していこうと思います。思ったより大部になってしまったので、長すぎる、面倒臭い、という方はせめて「4. 学力の国際比較」だけでも…

【メモ】FROGMAN 秘密結社鷹の爪団 独立愚連広報部 『ゆとり教育』

あらすじ 「亜呆」と大書されている白地のTシャツを着たヤンキー風の男と紫のアイシャドーが目立つガングロ風の女性が会話している。女性が便意を訴えると、どこからともなく「ゆとりもん」が登場し「どこでもトイレ」と言っておまるを取り出す。 ゆとりもん…

don_tacosさんへ

朝日新聞33歳記者が“上層部批判”を遺して自殺した | 週刊文春 電子版 [ゆとり世代クライシス] ご冥福をお祈りしますが、記事だけからいうと正直記者が年齢の割にナイーブ過ぎるように思う。世代の人数が少なく、上下同僚のつながりが少ないことや、コロナ…

corydalisさんについて

はてなで15年以上活躍されているcorydalisさんについてのまとめです。本当は時系列順に全て見ていこうと思っていたのですが、量が膨大過ぎたため、テーマごとにいくつか典型的な主張を引用しています。また、いつものようにこの記事を読まれたcorydalisさん…

ゆとり教育論文1000本ノック

CiNiiで「ゆとり教育」をキーワードとして全文検索し、ヒットした全ての論文に短評を加える*1。ただし、レビューする論文はオープンアクセスのものに限定している。また、ゆとり教育言説においては特に理系の研究者による流言飛語やトンデモな言説が目立つた…

ゆとり教育・ゆとり世代の定義

「ゆとり世代」の第一義的な意味は「ゆとり教育」を受けた世代である。ただし、ゆとり教育という言葉には公式の定義が存在しておらず、教育研究者の間でもその用法は統一されていない。また、殆どの人は複数の学習指導要領の下で学校教育を受けているため、…

ゆとり教育によって格差は拡大したのか―PISA調査からの検討

川口説 事実、2002年に土曜日が休日になったことにより、SESによる中学3年生の学習時間と高校1年生の読解力の格差が拡大したと解釈できる研究結果がある(Kawaguchi 2016)https://a.co/bB6Kc3q 「ゆとり教育による格差拡大」を実証するものとして頻繁に…

ゆとり教育期における俳句指導について

はじめに 学習指導要領 教科書 教員の意識/実態調査 結語 引用・参考文献 四季があるのは日本だけですhttps://togetter.com/li/1083681 どうして「四季は日本にしかない」と思ってる人が多いの?そっちの方が不思議。四季に関することは、日本は四季に敏感で…

ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討 3.補遺 『経験と教育』について

経験主義とは何か デューイがその教育哲学の基礎においているのは,経験主義という名からもわかる通り,「教育というものは子どもの実際の生活経験に基礎づけられたものでなければならない」という信念である。経験主義の理論はこの信念から出発している。し…

ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討 3.「ゆとり的教育観」は実在したのか

3.1 「詰め込み」と「ゆとり」の振り子 3.1.1 戦後のアメリカ式教育―新教育 経験主義について 3.1.2 米国教育使節団報告書 3.1.3 新教育批判 3.1.4 道徳の劣化 3.1.5 1958年改訂 3.1.6 1968年改訂―「詰め込み教育」― 3.1.7 1977 年改訂以降―ゆとり教育― 3.1.…

松岡亮二 『教育格差──階層・地域・学歴』 についての補足

素晴らしい本ですがより良い認識のための補足です。 川口説 事実、2002年に土曜日が休日になったことにより、SESによる中学3年生の学習時間と高校1年生の読解力の格差が拡大したと解釈できる研究結果がある(Kawaguchi 2016)https://a.co/bB6Kc3q 川口が…

ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討 2.ゆとり教育で学習内容は減少したのか

2.1 「3割削減は事実か」 2.2 「削減」は何を意味しているのか 2.3 学習内容の「軽減」とは何か 2.4 歯止め規定 2.5 指導要領の法的拘束力 2.5.1 法的拘束力とは何を意味するか 2.5.2 現場の教員の認識 2.5.3 指導要領の最低基準性と歯止め規定の見直し 2.6.…

ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討 1.補遺 社会生活基本調査の設計

まえがき 抽出ウェイト 層化抽出 確率比例抽出 系統抽出 確率比例系統抽出 線形推定用乗率 比推定用乗率 以下の記事に対する補遺です まえがき 社会調査一般において,何らかの母集団を調べようとする場合,その母集団に属する全員を調査できることは殆どな…

ゆとり教育とは何だったのか―俗説に対する批判的検討 1. ゆとり教育で学習時間は減少したのか

5年ほど前に書いた私的な論文を大幅に削除・修正したものです。供養としてここに置いておきます。あと4章分残ってます。 1.1 「土曜日の授業」とは何を意味しているのか 1.2 クラブ活動の削減 1.3 主要教科は「二重に」削減されたのか 1.3.1 授業時数の変遷 …

“昔なら入れなかったレベルの学生が東大に受かっている”!? 日本人の学力が低下し続ける原因とは

news.yahoo.co.jp 日常業務です。 2003年の結果は「PISAショック」と言われ、ゆとり教育の見直しが始まり一時期は順位も回復傾向にありましたが、2018年は、数学的リテラシー6位、科学的リテラシー5位、読解力は15位。読解力は相変わらず低レベルのままです。…

「名前のない世代」について

1982 作者:佐藤 喬 発売日: 2016/04/20 メディア: 単行本 「『バブル世代』は見栄っ張り」「『ゆとり』は使えない」など、いつの時代でも居酒屋や職場などでトピックになる“世代論”。団塊、しらけ、新人類、バブル、ロスジェネ(団塊ジュニア)、ゆとり、さ…

鈴木雄介さんについて

news.livedoor.com 茂木さんもたまには良いことを言うなと記事中引用されていた当該ツイートとそのリプライ欄をぼけっと眺めていたら 昔の僕の返信と、茂木氏の返信をここで再掲させていただきますう。わたくしの過去ツイートをまとめて再編してあるわたくし…

ゆとり世代の知能指数について

或いは知能指数の世界ランキングについて。実は、あの手のランキングはほぼ全てRichard Lynn*1とTatu Vanhanenが行った一連の研究に基づいている。中でも直接の元ネタであろうと思われるのが、書籍として公刊された"IQ and the Wealth of Nations (2002)", "…

「ゆとり」関連デマのまとめ

円周率が3 hajk334.hatenablog.jp 皆で手を繋いでゴール hajk334.hatenablog.jp オンリーワン hajk334.hatenablog.jp 付き合いを嫌う hajk334.hatenablog.jp 学力低下 hajk334.hatenablog.jp hajk334.hatenablog.jp hajk334.hatenablog.jp PC離れ hajk334.h…

【完全版】「円周率が3(ないし3.1)」はデマ

※以下の文章は「仮に指導要領を一言一句遵守した場合」にどうような解釈をとり得るか説明したものです。もしかすると、これほど長い説明をしなければ「円周率が3」を否定できないと考える方がいるかもしれませんので、ここで注意喚起しておきます。本文中に…

竹内薫は科学リテラシーが欠如している

論点をメモ。後で清書する。 物理屋だから言わせてもらうと、高校での物理履修率が90%からどんどん下がって20%とかになった時点で、モノ作りの国としては正直アウトなんですよね…日本病ですね。 https://t.co/JFrQXz5fbU — 竹内薫 (@7takeuchi7) May 2…

正体不明の「ゆとり教育」 / 「ゆとり教育の失敗」はどうつくられたのか

「ゆとり教育」という言葉の意味は一意ではない。私が確認した限り、初めてこの言葉が紙面に登場したのは70年代後半であり、この時は77年改訂学習指導要領のことを意味していた*1。したがって、最も広義にゆとり教育を解する場合、80年代以降がゆとり教育の…