若者論を研究するブログ

打ち捨てられた知性の墓場

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若年層の支出行動はどのように変化したのか 俗説と統計の乖離

そこに一番来てほしい若手社員が来ないことが内内で問題になっていたところが、SNSの中では来ないほうの社員の側が「忘年会スルー」という共通の言葉で共感しはじめていることが判明したわけです。彼らは少数派ではなく多数派になりつつあったのです。

若年社員が仕事とプライベートのどちらを優先するのかという問いについては以下のアンケート調査が参考になる。調査目標に「結果を『新人類』といったような固定的な枠をはめ分析するようなことをせずに」とあるように、現代の新入社員は「新人類」であるという固定観念に影響された設問が並んでいる。

その中には、「友人との先約と職場の飲み会のどちらを優先するか」という設問も含まれているが、結果は「職場の飲み会に出る」が45.4%(688名)、「友人とのコンパに出る」が51.6%(781名)となっており、プライベート優先派が多数派になりつつある状況が窺える。

また、経年比較には数理統計研究所の『日本人の国民性調査』が参考になる。同調査の「#5.6* 上役とのつき合い」という設問では、98年調査以降20代の「なくてもよい」とする回答が大きく減少しており、2013年調査時点では「あった方がよい」と「なくてもよい」の比率は1973年調査とほぼ同等の値となっている。ちなみに、土井隆義によれば、この結果は「ぼっち」を嫌うゆとり世代の性向を示したものだという*1

それで何人かに具体的に話を聞いてみると、これは当然サンプルとして偏りがある話ではあるのですが、共通点としてはモノにはほとんどお金をかけない。一方でスマホにはアプリやアクセサリーを含めてたくさんお金を使う。映画を見たり飲食店にもよくでかけるしタクシーにも乗る……というようなことが見えてきました。

外食費とタクシー代については全国消費実態調査でも該当品目があるが、いずれも減少している。特に若年層の食費の減少については消費者白書でも取り上げられているのだが、それすら参照していないとは驚きである。以下に30歳未満の単身世帯の支出推移を示す。

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*1:信念を否定する事実が示されてもなお信念が持続する現象については既に膨大な研究の蓄積がある。Chinn, C. A., & Brewer, W. F. (1993)によれば、反証例を提示された時に人が示す反応は①無視②却下③例外④留保⑤解釈⑥修正⑦変更のいずれかであり、中核的な信念が変更されることは稀であるという。